詐害行為取消権について研究してまいります
詐害行為取消権は難解な権利と言われます。その理由として、これまで以下の3点が指摘されていました。
イ 債務者以外の第三者に対する効力を扱う権利であり、債権の性質に関する本質的な理解が求められる。債権の本質に関わる問題である。
ロ 必ず訴訟によって行使する必要のある権利であり、民事訴訟法やさらには倒産法、執行法等の民事手続法に関する理解が必要不可欠となる。民法の知識だけでは理解できない権利である。
ハ 民法に定められている条文が僅かであり、ルールのほとんどが判例法理に委ねられている。判例法理を知らないと理解できない権利である。
平成民法においては、改正によって、詐害行為取消権についても多くの条項が新設されました。その多くは判例法理の明文化(分かりやすい民法)の要請によるものですので、上記のうちの「ハ」の問題は相当程度、克服されたと思います。それでも、「イ」と「ロ」の点が残っており、引き続き詐害行為取消権を難解な制度としています。
私は、大学生当時から詐害行為取消権について詳しく勉強する機会に恵まれ、その後の法制審議会民法(債権関係)部会での審議、京都大学大学院法学研究科での研究を通じて、詐害行為取消権のあり方に関する強い意見を持つにいたりました。
そこで、改正法に基づく詐害行為取消権の内容を説明すると共に、私の有する問題意識を披露させていただきたいと思っております。順次、解説をしてまいります。
なお、早急に詐害行為取消権の内容を理解したいという方は、私が執筆、刊行しました以下の書籍をお読みいただければと思います。
- 『判例にみる詐害行為取消権・否認権』(編著・新日本法規・2015)
- 『新・マルシェ債権総論』(共著・嵯峨野書院・2019)
- 『論点体系 判例民法〈第3版〉4巻 債権総論Ⅰ(共著・第一法規・2019)
- 『詐害行為取消権の行使方法とその効果』(単著・学位取得論文・商事法務・2020)
2020年04月01日 詐害行為取消権研究 始めました。
2020年04月28日 詐害行為とは何か(一般的な詐害行為類型)
2020年06月14日 続・詐害行為とは何か(私の理解)
2020年08月17日 相当対価による財産処分行為の特則(424条の2)
2020年08月17日 424条の2に第2項がないのは何故?
2021年07月01日 424条の3に通謀的害意があるのは何故?