改正債権法が施行されました。

本日、改正債権法(民法の一部を改正する法律・平成29年法律第44号)が施行となりました。故星野英一博士が、「第三の立法改革期」と呼んだ平成の大改正の最後にして最大の改正などと呼ばれた民法の改正です。この法律は、2017年5月26日に成立し、翌6月2日に公布されていましたが、国民生活に大きな影響を与える改正ですので、長期の周知期間を設け、2020年4月1日が施行日となったものです。

私が、日本弁護士連合会・司法制度調査会の債権法改正担当の特別委嘱委員になったのが、2007年のことです。その後、2009年10月には、法務省内に法制審議会民法(債権関係)部会が設置され、その幹事に就任しました。部会審議は5年以上に及び、全体会が99回、分科会審議が18回、合計117回の会議が開催されました。

法制審議会の審議は、法務大臣からの諮問事項に基づいてなされます。今回の債権法改正に関する諮問内容は以下のようなものでした。

諮問第88号(2009年10月28日・法制審議会)

民事基本法典である民法のうち債権関係の規定について、同法制定以来の社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かりやすいものとする等の観点から、国民の日常生活や経済活動にかかわりの深い契約に関する規定を中心に見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい。

この諮問から、今回の債権法改正の2つのコンセプトが導かれることになります。一つは、社会・経済への変化への対応という方向性で、「民法の現代化」などと指摘されます。

もう一つは、国民一般に分かりやすい民法という視点です。ただし、この意味には注意が必要です。文章として分かりやすいという意味もないわけではありませんが、主眼は、明治期以来、長年にわたり形成されてきた判例法理を明文化し、民法に取り込むという意味です。法制審議会の上記部会の幹事であった山本敬三先生などは、この方向性を、「民法の透明化」などと呼んでいます。

民法の現代化と分かりやすい民法、これが今回の債権法改正のコンセプトとなります。これに基づき具体的に改正された項目は200を超えています。私もこれまで全国の弁護士会や司法書士会、さらには経済団体や企業、そして、多くの大学において債権法改正に関する講演をさせていただきました。その内容をもとに、順次、改正債権法のポイントや問題点を解説いたします。

なお、法制審議会の審議の中でも、詐害行為取消権の改正は重要な論点になりました。この点は、私が多年にわたり取り組んできた研究テーマであり、これまでも多くの書籍を刊行し、また、京都大学大学院法学研究科後期博士課程で研鑽を積んで博士論文を執筆しました。そこで、別に「詐害行為取消権研究」としてホームページに掲載することとしました。さらには、改正作業にまつわるさまざまな逸話などは、「法学舎夜話」として掲載します。そちらもご覧いただければと思います。